最後まで、雪が詩になり溶けぬよに


遠い気がする

過ぎた未来を思い出せないでいる粉雪の戯れに

漂う息、今、たった一片の芥子をも救えなかったことを

詠おうか、此処に

僕ら二人が誰よりも欲しかった蠱惑があったことを

印そうか


夢や


詩や、其れによく似た薬用リップの掠れに

君は笑った

未だ、知らない潤いを知るためにやっとだった琥珀の秒の

淡すぎる、秋と冬、ふたつを繋ぐ境にあるだけの

見ない振りした

互いの手の温もりと違いと刻一刻と


昼の


雪、降り始めたばかりの

旧いふるいに掛けられた非常階段、錆びた響きは寄る辺ない

街の冷気を伝わっていく

君へ、言葉に引き離された君たちへ

散り散りに知るしかない一頃の、伴いの景色に何を想えば

満たされる


遥か


向こうの光に溶け込む首筋は

震えに揺れる

銀の紛い、ハイビスカスの耳飾りは忘れられ

与えられた一時の傍ら、鎹の、ひとつのえくぼが咲くように

下らない

昔に拾った命は捨てられた


側に


寄せられた片頬への小さな口付け

凩になる、そして

再び、もう出逢えないかもしれない気持ちに唾を吐いたのは

仰いだ曇天からの

降る白が、余りにも嘘臭かったから、二度と

僕はどんな約束も千切ってしまいたくはなかったから




















     最後まで








































                  最後の




























































           最後の
















































































                              最後まで




































































































               雪よ
























































































































                                           詩になれ










































































































































       詩に、なってくれ







第四回三文賞 最優秀賞
石川史夫「最後まで、雪が詩になり溶けぬよに」

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