女の体


ホチキスで留めようとしたみみたぶの皮膚のやわいことやわいこと
妊娠の話になれば軒先のあじさいまでもざわめいていて
ねえ神様わたしなんにも産みません約束するので生理を消して
産出の前に母体で死にかけたわたしの真夏 か弱いひかり
二十六年と半年けんかなどできないからだ夜を引き裂く
肉塊と呼ばれてふり向けば鏡の中でいつかの老婆わらって
「売春かあ」お金がなくなると決まって源氏名なんて考えていた
首を吊る手際を知るのが遅かったもうこんなにも生きてしまって
英雄も悪い政治家も庶民も女の体から生まれてくる
わたくしは何を生んだらいいですかひとりでからから回る矢車







第六回三文賞 特別賞
北城椿貴「女の体」

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