夜のために
街に棲む人たちが浅いねむりをつづけ
いろくず。
つよく光っては
重たく、ざらざらした闇を
裏返す。
あなたはスプーンをさがしつづけ
さがしつづけ。
また道路に海鳴りの音。
産まれなかったあなたの妹、
おなかに入ったままの妹に
わたしは渡したままなんだった、
ふるい銀のスプーン。
妹、
女、
の
涎にまみれて
スプーンが
つよく光っては
闇をかき混ぜる。
いろくずのように。
浅いねむりが深い闇を産むだろう。
夜はもうすぐ。
第六回三文賞 特別賞
とみいえひろこ「夜のために」