リベリオンなbokuたち


10代の頃、将来のイメージはテレビに映る大人だったし
、自分は何者にもなれると思ってたし、【青春時代の努
力】というものが確実に自分を〈テレビ出演〉というス
ターダムにのし上げてくれると信じて疑わなかった。い
くつもの夏は過ぎ去り、20代も半ばを過ぎて、自分がテ
レビに映ることはないだろうと悟ったあの日、私は尋ね
た、ハロー、【将来のイメージ】調子はどうだい?お給
料がよかったり、お休みが多かったり、幸せな家庭を作
ること、そう、テレビに映らなくても、自分の目に映る
だけの幸せの追求に、シフトチェンジ出来た?東京スカ
イツリーという〈システム〉が完成した瞬間、テレビは
全てデジタル化され、アナログ放送は終了した2011年の
夏、映る映像がちょっときれいになったというだけ、テ
レビに映る君の瞳のHiがはっきり映ってきれいだという
だけで、ぼくらは《文明の進歩》を感じることができる
、それって素敵なことかもしれないけど、もうそれくら
いしかないんだよ、《文明の進歩》って、〈今よりちょ
っときれいになる〉ってだけ、それが、それだけが、《
文明の進歩》で、これから老いて醜くなる私たちは、そ
れだけで、もう、【アンチ文明】だった。

もう〈文明〉を【傷つけ】たくもないし、
〈偉い人たち〉を【殺し】たくもないのに。


最近、よく夢を見る。
デジタル放送から2十七年後の2038年。
最早僕たちの心はデジタル信号で、
僕が君のことが好きか嫌いかなんて、
二進法的にわかってしまうにもかかわらず、
君と僕はiQOSを吸いながら
アナログテックな星空を見上げて
「あれがデネブ、アルタイル、ベガ、夏の大三角」
なんてしたり顔で言ってる君の、
瞳に映るビリジアンの輝きに
目を背けてる、だけの夢。






第八回三文賞 佳作
凸森一平「リベリオンなbokuたち」

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