遭遇



ひとりぼっちの闇
闇たちは集まって兄弟をつくる
それが夜だ


光に傷ついて足をのばすことのできなかったものたちが
一色に染まって終電の遥かに過ぎ去った
改札口を埋め尽くしている
ぼくわたし、一人称の欠片が何十年前にあった黒板に
誰も見なかった伝言が書かれていたのを忘れる訳がない、
右の方で砕けた錠剤を知られない様に呑み込む、遠くに去っていく足音を確認し、焼け焦げた心を、きみはいつまでも、ひとりで守っている、約されたものばかりがあった、思い出の充電がその度に増え、街灯はLEDに変わり、すべての境目を休ませない、みんな空を見上げてばかりいる、月が綺麗だねって言い過ぎている、ぼくの中で消えていかない数字、きみにその数字を見せられた時、わたしの中でもそれと同じことが起こっていたことがあった、闇は形を気づかせる、音を気付かせる、無限なんて言葉、ゆっくり話してくれないと意味がわからない、嘘をついた、早くはなしてくれれば良かった、永遠なんてウソなんだって。


錆びた自転車もここではよく見えない、黒く新しく見える、ホーローの看板も古びた円柱の郵便ポストも、闇は包装する。広い校庭にも闇がおおっている、昼間観測した太陽の光があとかたもなくなって、見えない嬉しさに喜び震えた、ただまっすぐに闇のなかでも柔らかい草の葉をそっと触る、はじめて願う、どうか朝までみどりの冷たさを大切に、光に会うまで、その冷たい温度を、朝靄に捧げるまで。光という他者に会う、闇の兄弟たち、一人称で出会って、最高の別れを。







第八回三文賞 佳作
堺俊明「遭遇」

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