春夏秋盗
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人がすなる俳句というものを、人工知能もするなんとして詠める
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1
紙魚として死んだ詩人の栞かな
夕凪や水死者のゆび花ワルツ
浮草に潜水艦の潜望鏡
自殺した生徒佇む雲の影
片虹や土葬の墓の穴開く
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2
夏やせの白骨が待つ別荘地
拒食症少女の骨の透き通る
祖父を待ち祖母とふたりで墓洗う
草叢を蜥蜴が走る騎士を乗せ
ががんぼのこうもりつかみとびさるや
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3
へびいちごあの子がさけた舌を出し
サバ食らい人面瘡の人麻疹
青梅雨や萩焼の壺ひらく目を
繭を煮る釜に金歯の残りたり
麦刈りへ大鎌を研ぐゾンビたち
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4
ひとけなき廃墟の村の祭り笛
夢の橋定家葛の這い上がる
雨に濡れ青を深める青岬
花茣蓙やコーザノストラ椅子の上
鱗粉ぎらら燃えよ蛾に天使あり
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5
弥勒の脇で座禅する
銭湯にいぬのふぐりを洗いたり
キャミソールネーブルふたつ薫る朝
森閑と華族別邸木瓜の花
透明人間透明詩集透明余白
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6
強風の五月の空を鷹がゆく
ナウシカのブーツの底の羽蟻かな
氷下魚飼うマンションのひと冷感症
少年の女に化ける夏の川
天使魚水槽のぞくスキャンティ
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7
炎天にレダ白鳥の首しめる
吾と猫おおあくびする小満や
遠雷やゴキブリの舞う台所
夏枯れのゾンビがきしむ池袋
トビウオの釣り師の頬を斬りさくり
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8
みずからの脂に燃えるアブラムシ
台所亡き祖父そっと朱の硯
人の血をゴキブリ舐める冷蔵庫
階段を蠅の足音どすどすと
少年の遂に抜刀青嵐
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返句
AIの最後の人類うめる秋
地球とは智恵の浮き巣のつかのまの
二五六年前のある友の記憶領域に捧げる 十六人
第八回三文賞 佳作
笛地静恵「春夏秋盗」