つゆ


繭玉のなかでメロンをたべる
スプーンでえぐった水たまりはあまい
すずやかであまい肌色のさざめきが
ゆめの螺旋をかけおりていく



わたしたちはそれを
はっきりと思い出すことができる
雨にみまわれた海岸で工業団地で
それから
ふいにあらわれた
納骨堂、という簡素なひびきを背景にして


列島各地
あじさい通りを駆けぬける
つながれた手と手のはざまより
なおほの暗いわたしたちのやさしさ
襖にえがかれた草花はほのめかしていたのだろう
連なっているようにみえる
けれど黒い縁で区切られた感傷的な風景が
のびすぎた髪をひっぱる
そのしたたる水のようなあたたかさで


塀をよじのぼる蝸牛状のめまいを伴い
わたしたちは
くりかえしくりかえし学校へいく
ひとや虫や獣が
教科書であったりすることのしたたかさで
めくれないやわらかな臓物をめくる
そこにはおびただしい数の
メロンの種が詰まっていたから
わたしたちは
輪廻!
と歓声をあげた





よるべないつゆだ、雨が紡績している
なにかを迎えるように
わたしたち
繭玉のなかでメロンを食べる







第八回三文賞 特別賞
あやめ「つゆ」

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