3年



「私、詩とかは見ない。」


その綺麗な発音。

雨が離れていくことを地上では朝というんだね
空の上では帰ってきた雨を祝っている
雨がいまは写真を撮った人達は少ししか残っていないという 霧雨は鍵をかけた

階段から見えた飛行機雲の軌跡は本当に白かった
青空に支えられて 消えていくなんて思えないほどに

うなじに冷たい朝の風
記憶を繰り返したあと

水たまりに薄くはった氷を踏まない 微かな迂回を
あの人もきっと、許してくれる

子どもが
その氷を楽しそうに砕く音
溶けていく破片に映る
まだはっきりとした飛行機雲

霧雨を羽毛に光らせた小鳥の瞳に映る同じ背丈の花
冬に満開の花を見つけている

一つのうたが限りなく続く沢山のうたをうたわせる
言葉の星の中で、空白や句読点だけのうた、嫌いなものだけのうた
全てがうただと知った時
生きることはもうそれだけで充分だった

思うことも、辿ることも、繰り返し失うことも、いつか土にかえる日の為の、力の花粉

午後
陽だまりから離れた席につき
手にとった詩集を読めば
蘇ってくるあの言葉
そう私も
急いでページをめくって笑い返したことがあった

挟もうとした栞を手離しながら







第九回三文賞 佳作
堺俊明「3年」

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