孤境
故郷というもの
それは伸びた醤油ラーメンを食す悲哀の朝
それはコーラ味のねり消しの匂いを狂ったように嗅ぐ子ども
それは酢酸醸造工場の娘の艶美な首筋の輪郭線
それは僕に・・・
軟体光合生物の蠢きへのメタモルフォーゼ！
あぁ、ただのノスタルジアに過ぎない！
故郷に特有の無慈悲なる生物サイクル
無意味な誕生
有意義なネグレクト
セックスの思ひで無き地元のラブホテルの窓
（僕の陰茎が地元のラブホテルの窓群とコンコルダートを結ぶことは無い）
故郷……
コキョウ！？
言葉にすると嘘八百
まだ死んでいない
殺しても
殺しても
殺しても
何度でも殺し返してくる
おぉ！あなたは黄金エレベーター付き三階建てリフォーム済実家！！！
まだ生きている
三回殺したにもかかわらず
あなたはまだ私の母親にして性的対象
妹にいたっちゃまだ原子核さ！
時の流れ時流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流れ時の流
xvideoのストリーミングのように時は流れ……
水飴のように甘ったるい「関係性」(Wi-Fi)だなぁ！！！
玄関を飛び出し
父の死から10の！乗歩進むと桟橋がある
その桟橋の下を流れる川は雀谷川と呼ばれていて
僕が生まれる前までは生命の根源だった
今じゃBDの付録が抜かれたエロ本捨て場さ！
生憎
故郷はようやくLPが普及してきたような世紀だよ？
（エロBDを抜き取ったのは誰だ？）
そんないやらしい川の桟橋を闊歩し、
世界同時性友の夢を描きながら白痴ばぁさんを時の流れへ蹴り落とす！
僕はすっかり
咎人にしてインポテンツ
都会のビルは
カラスとインポに優しいから
僕は故郷に帰らない
第九回三文賞 功労賞
凸森一平「孤境」