ゆう拐の日


「てん国」にファイルされた湾がんに
つぼみを落としてあるくひとがいる
かい面に落とされた蕾は
すぐさま「はな」をつけ
やがて花はのみ込まれていく
くやしいおもい出といっしょに
しずかなわん岸の
しずかな「真っぴるま」に
飲みこまれていく

#akrofp

あなたはそんな光けいを見つめていた。錆び
ついてひらかない窓ごしに、ひとり、みつめ
ていた。そんなこう景をただひたすらに見つ
めていた「ゆう拐の日」に、だからわたした
ちは誰一人残らず、誘かいされた。ゆう拐を
くわだてたとおもわれるおとこもゆうかいさ
れ、そのじ件のあとには何ものこらなかった
そういう意みで、じんせいは「らくしょー」

ではないのだとあなたは気がつく。またひと
つかしこくなり、こころのなかでランドセル
をせ負ったおんなの子が「じしんだ」とつぶ
やいた。そとでは大つぶのあめがふっている
というのに、てるてる坊ずをつくってくれる
やさしい人はどこにもいない。女のこは部や
のすみっこのほうをむいたまま半にちくらい
はそうしていた。たまに「揺れてる、ゆれて
る」と言いながら数じつ前までそこに立って
いたあなたにしがみつこうとして、うでが宙
をからぶる。何ねんもつづくじ獄のようなお
はなしのおしまいに人げんはそん在せずじゅ
う力がいちミリメートルかたむけば、蝶のむ
れがべん器のなかにかえっていった。たくさ
んのきゅうきゅう車がとおり過ぎてい「く」







第十回三文賞 特別賞
宇田川ぎ「ゆう拐の日」

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