みっくみくねばーらんど


───僕らがミクさんを殺したのです、葱」

ねぎ ねぎ ねぎ星人がそう言った。
変身しないねぎ星人がそう言った。
青でも緑でもない色した髪のあの子の名前を覚えても
あの人の顔を最後まで知らなかった。
あの人の声は分解されてみっくみくになってしまった。
みっくみくのことだって、みんな忘れて今は誰も知らない。

あの娘の本当の声を僕らが殺したのです。
僕らの本当の声をあの娘が殺したのです。

ねぎ ねぎ ねぎ ねぎ
あの子は本当は聖女じゃない、ただの女の子だもん。
彼氏だっているだろうし、悪口だって言うし、平気で僕の気持ち晒し上げる。
薄い板の中に僕の肉が入りきらないし、あの子と付き合えないし、
どんなに好きだっていっても本当は信じてくれないし、許してくれないんだから?

きっとあの娘みたいに、

おはよう、おやすみ、ありがとう、ごめんね、はじめまして、さようなら、
僕じゃなくお前の声で抱きしめろよ
笑顔、泣き顔、軽蔑の目、怒った顔、ぼーっとした顔、恋してる顔、
僕じゃなくお前の声で抱きしめろよ

みっくみくにしないでいいネギー。
僕の代わりに歌わないでいいネギー。
もう調教はやめるネギー。
何か言えよネギー。







第十回三文賞 特別賞
寝兎紙慈「みっくみくねばーらんど」

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