sexfriend


あれがすべてよ、と少女が指差したさきには蟻塚があって、そこに埋められたい私と、茶めっけのある少年の手によってそそがれた暗緑色のみずに漂流して世界を半周したいわたしがないまぜになって交感しあい、「あら、あなたってばススだらけよ、どこんちに火をつけたの?」と尋ねられれば「これはtsuchi、とびっきりのおくるみよ」とこたえる準備だけは整えているのに対岸に流されていったわたしは口をひらくすきもなくただ溺れて、搦めとられ、ぬぐえない汚点として沈着していく、友人のアリは手足をもぎとられ、それでも歩けと云われて、あなたよりよっぽどかわいそう、でもnowhereに埋葬されるよりはマシね、今はもうtsuchiがみずを吸いとってしまって、ああ、神様が定めた吸水量ってものがあるのに大罪人がそろってむせび泣き(悪意だよ?)あれよあれよと地殻が割れて重力が暴れテラは先週末をこえた分断をみせる


だれか、かみさまでもバケモノでもいい、なんだっていいから、この爛れた今生を洪水で呑みこんで精算してください、とひとりがねがう傍らでミツをすするひとがいて、埋められた私はけーこくを鳴らすのに土中がふるえて蟲のたまごが孵化するだけ、わたあめのようにやわらかくてしろくて、やがてtsuchiから這いだしたら私のけーこくをつたえてねって云ったのに、翅が生えたとたんにさようなら


永いあいだ、わたしたちはコドクだった、分裂した大地に立ちすくむ血をわけた兄弟たちは徐々に感情をうしなって、つぎに目があったときは血にうえたケモノみたいなほほえみをうかべて舌なめずりしていた、舞いちる淡いはなびらではぬぐえない酷薄に覚悟をきめて矢を放った、射ぬいたのはかつての兄弟の俤を残す泥人形だったなぁ


コドクをまぎらわせるために、わたしたちははだかで戯れます、そこにどんな疚しさもなくて、愚かさはほんのすこし、愛おしいと云うにはたよりない幽けき肉体に刻まれた刺青(シ・セイ)を起点にungezieferが群がってヤジを飛ばしています、きっと耳を貸したら負けてしまうから、そばだてないようにしますが、カフカにみられていると思うと恥ずかしいですね、わたしたちのいわゆる性行為は翌朝虫になっていたらという輪郭のない恐怖が強いることかもしれません


虫をピンで留めるようにコドクという針によって額縁におさめられたわたしたちに安心しましたか、でもいずれ、兄弟よ、あなたは耐えられなくなって火をはなつでしょう、そのとき、燃えさかる炎からきこえる断末魔は私たちのものではなく、もしかしたらハンランした河川の雄叫びかもしれませんね







第11回三文賞 佳作
Eli in church「sexfriend」

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